医学の話題
梅毒の行方,他
X
pp.53
発行日 1959年5月15日
Published Date 1959/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910853
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戦後間もなく,売笑婦の梅毒罹患率は非常に高く,梅毒の大流行が当然予想されていた。現在統計の示すところでは,而し乍ら顕著な増加もなく,略々安定した数字を示している。当時吉原でに性病にかからなかつた者に,例えば3ヵ月無事故ならば毛布1枚,6カ月ならば布団1枚という様な報賞制度があつたとか聞く。勿論慎重な検診は週1度行われ,性病の早期発見に努力したこと,ペニシリンその他の極めて有効な薬が広く使用されたことが,梅毒大流行を大過なく,おさえた原因ではある。
来年13年,本来ならば,当時罹患した患者では脳が犯される頃である。当時の罹患率と不完全な治療から想像すれば脳神経梅毒の増加が当然予想されるが,最近の大病院精神科では,患者数は決して増えてなくむしろ昔より,減少しているそうである。而しながら一方貧困の為医治を受けられない人々,山間僻地の人々の間ではどうであろうか。これらの人々の統計がとれない現在まだ油断出来ないところである。しかも赤線廃止後1年,売笑婦の名は消えても売春行為のあとを絶たない現在,住時の様な厳重な検診も行われず,しかも梅毒の自覚症状の全くない状態であるので,今度10年を経てどういうことになるか不安はまだ消えそうもない。
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