Nursing Study・28
精神病患者の訴えと看護学—インタービユーを通して
神郡 博
1
1国立国府台病院精神科
pp.14-19
発行日 1958年2月15日
Published Date 1958/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910530
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まえがき
ノーマルな人と人とが感情のやりとりを言葉の上でする時でも,時折自分の話したことが相手にわかつてもえたろうか,今言つたことが聴き手の感情を害さなかつたろうか,私の答は今,答を待つているその人の期待にかなつただろうか……と考えさせらることがある。まして感覚,意識あるいは思考過程のどこかで何等かの障害または異常がある患者の話から,患者の訴えること,要求,思考内容等をつかみ,これにその時その人にぴつたりした答を与えることは非常にむずかしい。時には不可能である。もうすでに患者の訴えや要求,思考内容がわからないときがある。わかつたとしてもどこまでが正しいかをその話の中でくみとることは困難なことがある。
しかし,全くわからないから,言つていることが完全にまちがつているからということで何んの答もしないで放つておけば,ますます患者の不安や不満をつのる一方だろうし,だからと言つて貴方の言つたことは××で××であるから誤つていると言つてみても始まらない時もある。しかしこんな誤りもどこかで,ある時期に改めてやらなければならない。またこちらから正しい答をしても必ずそれが患者に正しく解されることも少い。従つてできるだけ患者の希望に適した形で答を用意し,しかも患者の疑念や不満を解消させてやり,誤つた判断や体験を取りのぞいたり,矯正したりすることは非常にむずかしいことである。
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