——
随筆:女の幸福について—若い女はのびる
大河内 由芙
pp.65-67
発行日 1954年5月15日
Published Date 1954/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910025
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
学校の卒業式の日,卒業後間もなく結婚するというある学生に向つて「お嫁にいらつしやるんですつてね。おめでとう」と言つたら「いゝえ。お嫁に行くんぢやなんいです。結婚するんです。」と即座にやり返された。私ははつとして,不用意に発した自分のことばを恥かしく思つたのでしたが,このことばは,現代の若い女性の気質をまことによくあらわしていると思います。
実さい,「お嫁に行く」ということと,「結婚する」ということとの間には,全ぜん違つた意味が含まれている。「お嫁に行く」という言葉のうらには,何かしら従属的な一まつの暗いひびきがあるのに対して「結婚する」ということばには対等なものの,明るいひびきがあり,この学生は,お嫁には行かないが結婚はする,ということを言つたのでした。
Copyright © 1954, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.