講座
最近の肺結核治療に対するナースとしての心構えと療養指導
中村 善紀
pp.228-233
発行日 1956年4月15日
Published Date 1956/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910112
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はじめに
肺結核症の患者は他の疾病の患者とちがつて療養期間は年を単位として考えなければならない。それは肺結咳が非常に治りにくい病気であり,且つしばしば再発するからである。化学療法や外科療法の発達した今日でさえ,「君の肺結核は完全に治つたのだ」と患者に言いきれる医師がいるであろうか。それ程肺結核の予後を判定することはむつかしいのである。
結核患者の長い療養生活はその人にとつては人生である。療養所の患者の生活は治療の時間を除けば社会での生活と同じである。患者と医師と看護婦の有機的なつながりが長くつづくわけである。然し医師は1人で30人から50人位の患者を受持つていて,毎日同一患者に接することは出来ない。看護婦は毎日,少くとも3回の検温,検脈のため顔を合せなければならない。丁度家庭でいうと父母と子供のような関係にある。父親は毎日勤めに出て一日中顔を合せないこともあるが,母親は一日中子供に接して,小言をいいながらも心から相談にのれる存在である。これと同じように患者は看護婦とは,よいにつけ,わるいにつけ口をきくことが多い。母親として病気の事について話したり,療養上の注意や指導を与えることが一番多いわけで,看護婦の一言半句は患者の療養態度に,ひいては治療成績に重大な関係をもつてくるものである。肺結核の治療に新しい治療法が一般化した今日では新しい療養心得と心構えとが生れてくるのは当然である。看護婦諸君も新しい化学療法や外科療法に対する一般的な知識を修得し,これについて患者への指導を行えば肺結核療法をより効果的にすることが出来る。
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