特集 乳児の哺育と看護
〔Ⅰ〕健康児
精神的発育からみた乳児の間題
神前 章雄
1,2
1東大
2都立養育院附属病院小児科
pp.62-88
発行日 1956年4月15日
Published Date 1956/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910097
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はじめに
小供をすこやかに,丈夫に育てるためには,小供に対する正しい医学常識をもつことが必要であると同様に,小供の心を正しく育ててゆくためには小供の心についての正しい知識を持たなければなりません。そうしてこれを正しい愛情を以て裏打ちしてゆくことが必要であります。このことは母親はもちろん,保育にたずさわる人々の当然心がけておくべきことであります。
従来の看護婦或は保健婦諸孃に対する医学教育は,身体面を重んずるあまり,精神の面を稍々ないがしろにしたきらいがないでもありません。一人の頑是ない赤ちやんにとりましても精神と身体との働きは密接不離な関係にあります。肉体の故障は容易に精神に影響しますし,又心の不満は肉体を害うものであります。“赤ちやん返り”という現象がよく見られますが,これは身体の障害によつて精神発育が遅れることを云うのでありますし,ホスピタリスムス(Hospitalismus)というのは施設に收容されている小供が身体発育の遅れると共に精神発育の面にも欠陥が生ずることであります。これらの事実は肉体と精神の不離なことを示すよい実例であります。従つて,この両面から小供を周到に見守り,保育してゆくことが大切であります。
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