特集 ビル・地下街—新しいコミュニティー
日照間題
小木曽 定彰
1
1東京理科大・建築科
pp.539-542
発行日 1968年12月15日
Published Date 1968/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203790
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日照関係で書いたりしゃべったりの注文を受けることは最近ことに頻繁であるが,ビル・地下街の特集というのには少なからず驚かされた。しかし,ひるがえって考えてみると,最も純粋に日照問題を考えるためには意外と適した場であるのかもしれない。すなわち第1に,日をよけるということは全く考えなくてよいこととなるし,もしまた日照に健康上不可欠の効用があるとすれば,地下街には長期間の居室をとることはできない。日照の効用は現在の技術では人工設備でおおむね代用できるとわれわれは考えているが,今後ますます地下街が発展して,地下街の居住人口がふえてくると,意外な方向から日照の効用を見直さざるをえないという事態が生ずるかもしれない。そして,もし新たに代用不能の効用が見つかるとすると,これは今日のややこしい日照権問題に最も明瞭な解決を与えることになる。そうならないとはだれも断言できないはずである。むろんわれわれはそれを期待しているわけではないが,地下街の居室を考える際にも日照の効用を考えることによって,必要な施設設備を求めることが有用であろうし,またそれは地上で日照を奪われたために生ずる各種の日照権問題の解決にも役だつことになるかもしれない。以下そういう意味で,日照の効用とその代替設備というものを考えていくこととするが,編集部の注文もあるので,別に日照権に関する判例その他の法律的な面の解説もつけ加えることとする。
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