講座
性格とその異常(1)
高木 四郎
1
1国立精神衞生研究所児童精神衞生部
pp.15-17
発行日 1956年1月15日
Published Date 1956/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910031
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〔一〕
医療にしても看護にしても,その仕事は単に肉体の病気だけを扱うのではなく,生きた一個の人間全体を扱うのであるから,肉体の面だけを考えていたのでは片手落ちのそしりを免れない。医療の目的は,肉体的にも精神的にも幸福で活動的な社会生活を営み得る状態に患者を少しでも近ずけ,回復させることである。であるから,医師も看護婦も単に患者の病気のことだけを念頭におくのでなく,いつも同時にその精神状態にも注意を払うべきであろう。
病気というものは人間の大きな不幸の一つであつて,失意・煩悶・不安・焦慮等さまざまな感情的問題を伴うものである。したがつて,たとえ病気は肉体的なものであつても,病人は一般に精神状態の変調を示すものである。病気が重ければ重いほど,また長びけば長びくほどそれら精神状態の変調も著しい。
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