講座 2頁の知識
性格の型について
島崎 敏樹
1
1醫科齒科大學
pp.55-56
発行日 1951年5月10日
Published Date 1951/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200085
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重役タイプという身体つきがある。禿頭で,あから顏で,ずんぐりといつた出來である。重役タイプと聞けば,誰でもすぐこうした身体をひとりでに思い浮べてしまうほど,それは似つかわしいが,しかし何も重役と限つたことはない。圓いあから顏で脂肪質で肥滿し,指のしなやかな造りの人は,とにかく人と一緒に居るのが好きなたちで,世話やきで,ひとりで考えに耽つているよりも,企畫を即座に實行に移す方が肌に合つている。物事を判斷する眼は,外の現實的環境の全體を考量して釣合がとれている。こうした性質の人が社會生活をしていれば,自分の持前からして,自分から志ざさずにも,自然と世話役とか事業家に形成されてゆくであろう。
肥滿型の體質と現實的開放的な性質との間につながりがあることを,實證的な方法で明かにしたクレツチマーの性格論が出たのは1920年代のことであつた。この型の人の心の一番底で動いているものはみずみずしい感情で,それが明るく照つているときは快活で能動的で,人が居ないではいられない。けれども幸せを知る人々は,また裏返つて沈欝の世界に沈むことも出來る人々である。感情がかげつているときは,彼等は重々しく憂わしげで,人の前から退き,靜かに憩を求める。爽快と憂欝,輕やかさと重苦しさ,この兩極の間を搖れるところに「循環性氣質」の人たちの本領がある。
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