特集 結核問題の展望
結核の診断
坂元 正徳
1
1国立療養所再春莊
pp.16-21
発行日 1954年5月15日
Published Date 1954/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910013
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I.緒言
近代医学の進歩は結核症の分野にも著しい発達をもたらし,結核の診断も亦複雑多岐になつて来た。昔は結核の診断は病症が初期であるか否か,軽症か,重症かが分明すれば事足れりというところであつたが,今日に於ては病症の諸型相がわかることによつてその治療方針が確立され,病気の推移,予後が判定される。
一方又我国に於ける結核症そのものも数十年の間に変貌を来し,頸部淋巴腺炎,肋膜炎,腹膜炎,結核性脳膜炎等急性或は亜急性に現われるものが少くなり,慢性に経過するものが多くなつて来た。これは特に診断手技の進歩と相俟つて自覚症の少い結核症の早期発見を促すこととなり,早期診断の重要性を示唆するに至つた。いい換えれば急性或は亜急性に現われる結核症の多かつた昔は主として臨牀症状の出現によつて結核症の診断がなされていたが,現在では臨牀症状の出現以前に結核症が見出されねばないようになつて来た。即ち臨床症状の出現は或程度結核症の進展した後であることを教えてくれるようになつた。
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