特集 結核問題の展望
肺結核の内科的治療法
小西 忠正
1
1東京療養所
pp.22-27
発行日 1954年5月15日
Published Date 1954/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910014
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現在の結核治療法はめまぐるしい進歩と悦ばしい混乱,さらに厳しい反省の渦の中にあります。ほんの数年の間にストレブトマイシンを始めとする新結核治療剤が誕生し,それらを検討している間に,新しい外科療法—切除例が着々と成果をあげはじめる。反面,旧来の治療法—安静や人工気胸術などに厳しい批判の声があげられる。といつた工合で,旧い治療体系の崩壊のあとには新しい体系はまだ確立されず,変革とその反動との揺れの中でともかくも日々治療に苦心しているというのが現状なのです。
やゝ古いデーターではありますが,1948年に米国で,ある患者の胸部レ線写真(右肺尖に徑3cmの空洞)を提示し,その治療法を結核専問医に問うたところ,安静0,気胸37(横隔膜神経麻痺術併用1),気腹1,成形18,横隔膜神経麻痺1,ストマイ11という答が出ました。同じ問題についての清瀬地区各療養所の専問医31人の解答は,安静0,気胸2—気胸不能ならば切除1,成形10(切除でも可),外科療法1—気胸又は成形1,初めから成形7,成形又は充填術1,成形または切除1,切除7となっています(1950年,砂原)。現在でもやはりこのように十人十色の答が出るでありましようし,そのように結核の治療に一貫した法則性一体系が未だ確立されていないのです。
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