時の動き
ヒモ付きは御免だ
pp.62-63
発行日 1955年7月15日
Published Date 1955/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909879
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政府は先月の20日にアメリカから濃縮ウラニウムを受け入れることを決めて,受入れに伴う双務協定を結ぶため,アメリカ駐在の井口大使が中心となつて,アメリカ側と交渉をつづけています。これは,どういうことなのでしよう。まず日本は広島や長崎に原爆の大きな被害をうけたほか,昨年はビキニ水域で,水爆実験の被害をこうむっていることを頭において下さい。そこで濃縮ウラニウムとは,いつたいどんなものなのでしよう。鉱石から精練されて出来る天然ウラニウムには,U238とU235という2つの性質のちがったウラニウムが含まれています。そしてU238の方は性質がおとなしくU235は大へんなあばれものなのです。あの恐しい原爆や水爆の原料となるのはU235です。U235は放つておいても,たえず原子核が分裂し,分裂した原子がまた分裂して高い熱と強い放射能をまきちらしながら連鎖反応をおこしています。原爆や水爆はこのU235をなるべく多くあつめて,一瞬に分裂をおこさせるのです。しかしこのあばれもののU235を少しづつ分裂させて,いくらかづつ熱と放射能を出させれば,我々の生活に大へん役立つのです。例えばU235を少しづつ分裂させて,放射能の方は遮断し,熱の方を使つて湯を沸かして,蒸気でタービンをまわせば電気が起ります。これがいま外国で盛んにいわれている原子力発電なのです。
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