講座
皮膚の訴え
横山
1,2
1慶応義塾大学
2中野組合病院
pp.6-9
発行日 1955年3月15日
Published Date 1955/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909763
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
皮膚は全身を隈なく包んでいて,その面積は勿論各人により差異があるが平均1.5乃至1.6平方米あるといわれている。そしてその附属器管として汗腺,皮脂腺,毛髪,爪などがある。皮膚が5感器の一つで,知覚作用のあることはいう迄もないが,その他生理作用として汗脂分泌作用,体温調節作用,呼吸作用,吸收作用などがあり,又,体外保護作用として打撲,圧迫,摩擦等の器械的刺戟等その他細菌,光線,温熱,化学藥品の各種外来刺戟に対して身体を保護するが更に体内保護作用(エゾフイラキシー)として体内諸臟器を保護し,又その疾患の治癒を幇助する働きもある。
従つて皮膚は単なる身体の被覆物ではない。皮膚の病変が身体諸臟器に各種の障害を起すことは少くなく,例えば広汎な火傷が重篤な症状を起して死の転帰をとることさえあることは一般に知られている。反対に内科的疾患の際に皮膚に特有の変化を招来することも亦決して少くない。卑近な例を挙げれば黄疸の際の皮膚黄変,貧血,急性腎臟炎における各特有な顔貌などの如きである。俗に「眼が口ほどに物をいい」という言葉があるが,これに一寸似通つているSprache der Hant(皮膚の告白或は皮膚が物いう)及びSpiegel innerer Leiden(内臓疾患の鏡面)という語は上述の事柄を適切に表現した詢に翫味すべき面白い語であると思う。
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.