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ヘレーネ・シュワイツア夫人
高橋 功
pp.105-110
発行日 1954年10月15日
Published Date 1954/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909668
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1958年度のノーベル平和賞委員会は,1年さかのぼつて前年度の平和賞をアルベルト・シュワイツアに贈ることを決定した。昨年度も有力な候補者に選ばれていながら保留というので汰沙止みになつたと聞いていたが,それが既往に遡つて昨年になつて決定したのである。遅ればせながらも,シュワイツアにノーベル平和賞が贈られたことはうれしい。もう何年も前にそれをもらつてもいゝはずなのにと私などは思つていたので,今さらという気もしないのではないが,やはりうれしいことである。
シュワィツアは人も知る通り23歳でシユトラスブルグ大学神学科を卒業し,24歳の時「カントの宗教哲学」と題する論文で哲学博士の学位を得,翌年には神学博士の称号をえてシュトラスブルグ大学神学科の講師に就任し,聖ニコライ教会の副牧師の地位を得た。又彼は幼少の頃からパイプオルガンを学び,オイゲン・ミユンヒ,エルンスト・ミユンヒ及びシャルル・マリー・ヴイドールについて正式にパイプオルガンを勉強し,バッハを研究し,30歳の時に455頁に及ぶ大著のフランス語版「バツハを出版し,音楽家としてもすでに一家をなしていた。このようにシュワイツアは30歳までに神学者,哲学者,音楽としてすでに大成していたのである。
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