2頁の知識
赤痢の菌型
安斎 博
1
1北里研究所
pp.36-38
発行日 1954年8月15日
Published Date 1954/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909618
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赤痢菌は御承知のように,明治29年(1896)志賀潔先生によつて,関東地方の赤痢の流行の際,その糞便より分離されたものである。それであるから,赤痢菌の学名をシゲラと称されている。その後,明治33年(1900),米国のフレキシナーが,フィリッピンで志賀赤痢菌と異る赤痢菌を発見した。これまでは1病気1病原菌の,いわゆるKochの3原則が一般に信じられたのであるが,赤痢症はこの原則に従わないので,その病原菌が単一でないことが明かとなつた。その後相ついで赤痢を起す細菌が報告され,現在では27種の多数に達しており,更にその外いくつか追加されようとしておる。
このように,赤痢菌の種類が,多数であるが,その菌型が統一され,分類されたのは,ごく最近のことである。即ち昭和25年(1950),ブラジルのリオデジヤネイロで第5回国際微生物学会が開かれた際に,初めて国際的な分類法が確立されるに至つたのである。それまでは英米系の学者,ドイツ系の学者,或は日本の学者達は各々独自の菌名を附して,これを比較研究することが甚だ困難であつた。
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