Japanese
English
特集 記憶のメカニズムとその障害
序論
Introduction.
酒田 英夫
1
Hideo SAKATA
1
1日本大学医学部第一生理学教室
1Department of Physiology, Nihon University School of Medicine
pp.541-542
発行日 1988年8月10日
Published Date 1988/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431906206
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- Abstract 文献概要
複雑で謎に満ちた脳の働きの中でも,記憶は最も不思議な機能である。一つの手掛かりから過去の出来事を想い出すと,そのときの情景が視覚的なイメージとして浮かび上がり,時間的,場所的につながりのある一連の出来事が次々に想い出される。また人間は何万という言葉を覚え,何百,何千という人の顔を見分ける能力を備えている。このように大量の情報が脳のどこに,どのようにして貯えられ,どのようにして再生されるのか,という問題は多くの研究者をひきつけてきた。そして,ほとんど純粋に脳の中だけで起こる記憶のメカニズムを解明することは,高次の脳機能のしくみを理解する鍵になるだろうと信じられている。
しかし,これまでは動物実験による記憶のメカニズムの基礎的な研究と人間の記憶障害の臨床的研究の間には大きなギャップがあって,人間の記憶を科学的に理解することは不可能だろうという悲観論が支配的であった。
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