特集 精神疾患に対する神経内分泌的アプローチ
序論
高橋 三郎
1
1滋賀医科大学精神神経科学教室
pp.6-7
発行日 1984年1月15日
Published Date 1984/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203696
- 有料閲覧
- 文献概要
最近の神経内分泌学の急速な進歩は,視床下部,下垂体系の機構に関して多くのことを明らかにした。視床下部で生産され下垂体門脈を経て下垂体前葉に作用する視床下部ホルモンが次々に同定され,合成された。TRH,LHRH,SRIFは今日臨床的応用が可能である。CRF,GRF,PIFの構造も明らかにされた。視床下部ホルモンの各々は,夫々の対応する下垂体ホルモンのみならず他種のホルモンにも作用する。例えば,TRHはTSHの他にPRL分泌を促進し,二,三の場合,例えば末端肥大症,神経性無食欲症でGHの分泌も促進し,更にネルソン症候群ではACTHの分泌も促進する。さらに,視床下部に存在するモノアミン,アミノ酸,神経ペプチドなどによる下垂体ホルモン分泌調節機序も次第に明らかにされつつある。
これらの新しい知見を精神医学の分野に応用してゆくことが「精神神経内分泌学」の今日的課題と言えようが,この場合注意すべき3つの点を考えてみよう。第一に,このように層構造的に入り組んだホルモン分泌のメカニズムをよく理解していなければ意味ある研究計画は立てられない。第二に,用いるRIAの感度と特異性を知った上でなければ結果の解釈を誤る。策三に,臨床研究の基本問題として対象症例に対する診断の信頼性がある。とにかく,この分野の研究では,臨床家であってもかなりの神経内分泌学の知識が要求されるが,むしろ,基礎研究者との学際的な協同研究が望ましい分野ではなかろうか。
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.