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ふたたび一筆
大迫 倫子
pp.36-38
発行日 1954年3月15日
Published Date 1954/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909524
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昨夏族先で乞われるままに何気なく書いた私の随筆が,このような反響を皆さまの上におよぼしたことを知つて,実は当の私自身,ことの意外な波紋に驚いています。そしてそこに掲載された賛否両論の真劔な諸氏のお説に接し,その態度の誠実さに心を打たれると同時に,随筆として気軽なきもちで書き流した自分の態度を反省させられました。あまりに簡単かつ雑にすぎた文章であつたことを恥かしく思つています。もち論私の随筆が読後の感想文を募集するものに扱われるとは知りませんでしたから,書く気がまえも軽いものだつたことを,こゝに卒直に白状いたします。
いささか弁解めいた私語りになりますが,実はあの文章に私は適当な題名が思いあたらず,無題のままで,編集部の方で題をつけてくださるようにお任せしました。でき上つた本を手にして,“ナースは非情な方がよい”と題された自分の文章に接したとき,私は正直の処,思いきつた題名をつけたなアと感心し,またこれは誤解されやすいと,とつさに不安を感じました。
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