講座
のどの訴え
鈴木 篤郞
1
1信州大医耳鼻咽喉科学教室
pp.20-23
発行日 1953年10月15日
Published Date 1953/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909420
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のど(咽頭)は空気の通る呼吸道と,食物の通る消化管路との十字路である。鼻孔から入つた空気は鼻腔から上咽頭を通り,軟口蓋の作る関門をくぐつて下行し,前方の気管に入る。食物は口から入つて,後方の食道に運ばれる。ここで呼吸道と消化器路とが交叉するわけである。この十字路には交通巡査は居ないけれども,空気と食物との交通は一糸乱れずに運行される。試みに食物をのみこみながら呼吸をしようとして見なさい。どんなに努力しても,のみこむ一寸前から呼吸は停止され,食物が安全に食道へ運ばれぬうちは息の出来ない事がわかるでしよう。造化の妙味はこんなささやかな所にもあります。食物通過の際の呼吸道の遮断は,上方では上咽頭,鼻腔等への道を軟口蓋が,下方では気管への道を声帶が閉鎖する事に依つてなされるのである。
又のどの表面には幾つか扁桃(ヘントウ)と呼ばれるリンパ組織がある。口を開くと奧の方で両側に見えるのが口蓋扁桃で,代表的のものである。扁桃の仂きは今日でもまだはっきりして居ないけれども,のどの病気には色々と深い関係がある。前おきはこれ位にして,次にのどに関する訴えについて御話して見よう。
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