発行日 1953年9月15日
Published Date 1953/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909397
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たのしかつた,長い夏休みも終つて,ひきしまつた学校生活が再びはじまるようになつた。夏休みと一緒に訪れたような暑い気候も,やはり夏休みの終了と共にわかれてほしいものなのに,依然としてそのまゝ居座つている。しかも,暑さのはじめの頃に味うようなすがすがしい暑さではなく,年を経た暑さといつてわからなければ,何となく,ねつとりと,あぶらののりきつた,少し疲れてじれ気味のある暑さ,面白おかしくもない,むしろいやみさえ加わつて來た暑さ,それが,残暑といわれるものであろう。
「にくまれつ子,世にはゞかる」の感じそのもののようにもみえる。2ヵ月余りの暑い夏でいゝかげん体がつかれているところに,このくどい残暑というのがひきつゞいていられると,気分的にも,肉體的にも完全に参つてしまつて,涼しそうにみえるはずの金魚ですら,いきもたえだえにアツプアツプと泡をふいているようにみえてくる。そんな時,一枚の葉書,一通の電話ででも「いつまでも暑いですが,いかゞです。もうすぐ気持のよい秋が来るから元気を出しましよう」と,お見舞の言葉をきくと,急に元気が出て,がんばる態勢になれるものである。不思議なことだけれど事実なのだ。人間というものは,よくよく精神的に生活しているものとそんな時つよく感じる。精神が肉体に及ぼす影響は,肉体が精神に及ぼすものよりも,はるかに強く深い関係があるように思える。
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