附録
胃潰瘍
阿部 正和
1
1國立東京第二病院内科
発行日 1952年11月15日
Published Date 1952/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907178
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
滲透教育の講座で胃潰瘍について書くことを頼まれてから,滲透教育というものの内容,あるいは目的について色々な方にうかがつたり,または讀んだりして,どのように書いたものかと隨分考えてみたが,結局私は私なりの滲透教育をしてみようということにきめた。
それはどんなことかというと,私は看護學院の講義では内科學がどのように講義されなければならないかを色々考えた結果,將來看護婦になる人達に對する内科學は,醫學生に話す内科學とはおのずから違つたものでなければならないという結論に到達した。すなわち,將來看護婦になる人達に教える内科學では患者が訴える自覺的症状が,どのようなわけでできあがつているかということに考えを集中して,その症状の機構をじつくりと研究し,その發生原因にふさわしい看護法をしなければならないと思う。勿論,ひとつひとつの病氣の原因,病理解剖,症状,豫後および治療についての概念を知ることは必要だが,それ以上に大事なことはどうしてこのような症状が現われているのかを考えることであり,また研究してみることであろうと思う。このような學問のすすめ方が醫學の領域では最近發展しつつある。私どもはこの學問をとくに臨床生理學,あるいは病態生理學と名づけている。廻りくどく述べたが,結局看護内科學の核心は臨床生理學であるという立場で私は講義をつづけてきたし,また將來もつづけてゆくつもりである。
Copyright © 1952, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.