発行日 1952年8月15日
Published Date 1952/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907114
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婦人少年局に着いたのは10時半をちよつと廻つた刻限であつた。前の日に,あらかじめ電話で連絡をつけて置いたのであるけれど,そのときの約束では11時という藤田たきさんの指示であつた。しかし,時間的には非常に忙しい日課を送つているというお話であつたし,なるべく早目に出向いて行つて待つていようという氣持で私ははいたのである。
藤田ざんはまだ出勤前であつた。私は局長室のとなりの事務室で30分ほど待つた。煙草を吹かしながら漫然と室内の模樣を眺めていたのであるけれど,若干室内の雰圍氣に興味を惹かれないわけでもなかつた。というのは,婦人を局長にいただくこの事務室の空氣に本能的な好奇心が動いていたからである。好奇心というと語呂がつよいのだれけど,婦人の局長下で働いている同性の事務員達が何んな表情で過しているかという興味なのであつた。先入感や偏見などは毛頭なかつた。素面な氣持で,素面な視野に映つて來る彼女達の動きを觀察していたまでの話である。
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