時評
厚生勞働兩省の合併について
石垣 純二
pp.26
発行日 1952年5月15日
Published Date 1952/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201034
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行政機構改革は1府9省にまとまるか1府10省におちつくか目下不明であるが,何れにしても厚生勞働兩省の合併はもはや動かしがたい大勢のようだ。このことは昨秋あたりから豫想されたとおりで,ことあるたびにその見透しを述べて善處方を諸先輩に切言してきたけれども,根據なき樂觀論に醉つてる向きがあつて,ほとんど,これという實質的な對策も講じられることなくして今日に至つたことは,厚生省の運命に傍觀者的立場をとり得ない者の1人として,實に残念である。
さて兩省合併は地方行政への餘波をこそ問題にすべきで中央は大したことはない。大臣や局長の首が少しぐらい減つたからとて,それぞれ法令に基いて展開されている中央行政の實務はどうなるものでもあるまい。もちろん厚生行政のような國民生活に端的にひびく性質の行政を第二義的に扱つてきた從來の政治思想や,せつかくアメリカの指導によつて本來あるべき姿に返りはじめていた衞生行政を,ふたたび昔の冷飯時代に戻そうとする舊態依然たる政治家の頭は問題ではあるけれどそれはまあ現在の政黨の知性の水準では致し方もあるまいと思う。
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