時評
その後の勞働衞生
勝木 新次
pp.159
発行日 1951年10月15日
Published Date 1951/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200931
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日本が國際經濟界へ復歸するに際して,各國は日本の勞働條件に深い關心を示している。日本のILOへの参加も遠からず實現すると期待せられている。このような情勢下にあるだけに,私共は勞働基準法施行後4年間における我國の勞働衞生の歩みを回顧し,しつかりした今後への展望を持ちたいと思う。
(a)作業環境條件。この4年間に作業場の環境條件は確かにある程度改善された。荒廢していた化學工業の諸施設も整備されて來たし,鑛山の粉塵問題のように改善への研究的努力の見え始めたものもある。照明についての關心も深まり,螢光燈の普及,Color Conditioningの試みなども注目される。この種の改善を促した動機として,基準法の實施,組合運動の勃興も重要なものであるが,産業合理化の見地から勞働衞生に着目する傾向も一部にあらわれ始めたことを注目したい。そして技術者の作業環境條件に對する關心は確かに戰前より高まつて來たといつてよい。一歩を進めてSanitary Engineerが多數出現することを期待したいと思うが,とにかく經營と醫學との結合の崩芽が見え始めたことは重要で,勞働衞生に携わる者は,科學の武器を一層鋭利にしてこの氣運をたかめるように有效な活動をしなければならぬと思う。一部にはまだ基準法の緩和を強く主張する經營者もある。勞働條件の適正化こそが勞働の生産性をたかめる所以であることについて,もつと啓蒙も必要である。
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