発行日 1952年8月15日
Published Date 1952/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907107
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所謂暍病といわれる病氣は,大體3つの型に分けられている。即ち熱痙攣,熱卒倒,熱疲憊である。この3つの型は一應症状及び原因についても區別されてはいるが,普通多くの場合は混合した型で來る事の方が多いのである。
熱痙攣は,温度及び濕度の高い所で肉體的作業をする樣な場合に起すものである。故に製鐵所の樣な所謂高熱作業場の勞働者が發病する事が多いのであるが,最近は勞働條件,豫防方法の改善が爲されたので大分減少している。これは突然痙攣を起すものであり,時には頭痛とか筋肉の所々がぴくぴく動いてそれから強い痙攣を起す事もあるが,大體は前馳症状なしに突然發病する。更にこれは勞働時間が終つてから起きることが多く,家に歸つてから起きる事すらある。痙攣は骨骼筋の強い間歇的の收縮であり,普通は作業に使つた筋肉に起るのであるが,全身の筋肉が收縮する事もある。收縮した場合は強い痛みを訴える。全身は強く發汗して居り,體温は平温乃至やや高い程度,脈搏數もやや増加した程度で血壓は普通である。全身がぬれていて,皮膚は冷えたのもあるし,暖かい場合もある。嘔氣や嘔吐が現われる。この場合血液は非常に濃縮して居り,鹽分及水分が著減している。この減少は汗を多量にかいたために汗として體の外部に流出したために起きるのである。この筋肉の痙攣は血液中の鹽分及び水分の不足による事はたしかであるが,何故これらのものの不足が痙攣を起すかに就てはまだ分つていない。
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