特集 公衆衞生に必要な新藥の知識
放射線障害とその對策
津屋 旭
1,2
1東京大学医学部
2分院放射線科
pp.75-82
発行日 1954年6月15日
Published Date 1954/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201413
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ここに云う放射線とはIonizing Radiationの意であって,X線のみならず,天然並びに人工放射性物質(以後RIと略記する)から放射されるα線,β線,γ線其他を総称する。之等は何れも電離作用を有するものであつて,之に伴う放射線のエネルギー吸収が,放射線の生物学的作用一障害作用の根源をなす事は云う迄もない。
Röntgen教授によるX線の発見,Curie夫人によるRadiumの発見は近代科学の魁けをなすものであるが,その発達の歴史に放射線障害による幾多の尊い犠牲が払われている事は,Ehrenbuchder Röntgenologen und Radiologen aller Nationen(Strahlentherapie,1937)の中に詳細に記載されているが,吾国に於いても亦その例に洩れるものではない(1)。多年に亘る放射線診療の犠牲として再生不能性貧血で斃れた京大故末次教授,骨髄性白血病の長崎大故永井教授の名前は吾々の記憶に新しい。更してこの様な放射線障害が現在如何なる傾向を示しつつあるかという事は我国の公衆衛生上一つの重要な研究課題たるを失わないであろう。
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