主張
結核對策と豫算
末高 信
pp.202
発行日 1951年4月15日
Published Date 1951/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200817
- 有料閲覧
- 文献概要
昭和26年度の國の豫算は,社會保障という角度から見ると甚だ物足らない。しかしながらそれは社會保障制度要綱ががその審議會から政府に對し勸告されたのが昨年の10月であるのに,26年度の豫算は昨年の7月に編成方針が決定されたためその要綱の主旨を實現するための經費を組入れることができなかつたからによる。けれどもこの豫算の編成に當つては,社會保障制度の内容をなす個々の制度を漸次推進,發展せしめるために必要な經費は,かなりの程度に,いな可能の限り折り込んで居る。結核對策の如き,かくの如き意味から非常な重點をおかれて居る。
社會保障制度としては,全國民に對する養老年金や兒童手當の如きものも極めて重要な要素であり,これらを缺いては,全國民をその窮乏から護り,その生活を保障するという理想からは遠いものになるのであるが,勸告案は,現在の國民經濟の現状から見て,まず醫療制度の改善と疾病保險の完備に重點を置いたのである。人間がこの世において受ける苦惱のうち最も大なる病氣の對策とその經濟的負擔を合理化することに重點を置いたことは,まことに當を得た案であるというべきである。
Copyright © 1951, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.