発行日 1952年7月15日
Published Date 1952/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907092
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はじめに
まずおことわりしておかねばならぬことは,私は精神科も心理學もまるでしろうとだということである。それにもかゝわらず,こういう題目について,これから數ヵ月,お話しするのは,少からずおこがましいが,15年の間,貧しい結核患者ばかり相手にして生きて來てみると,つくづく,結核は病氣が相手ではなくて人間が相手である,と思わずにはいられない。そして,人間が相手であるならば,その長い病氣の間の心理や性格の動搖をいやでも,とりあげずにはいられない。おどおどとした落ちつかない目付きを,黒い長いまつ毛でおゝつた患者に,神經質すぎると小言を言つてみたところで,何も解決はされないからである。
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