発行日 1952年12月15日
Published Date 1952/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907205
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病的心理
以上,ふうつの患者心理について説明してきたが,まだ他に,ほんものの精神病(病的心理)がある。もつとも精神病となつてしまえば,もう患者心理の範圍を越えてしまうのだが,しかし精神病とふつうの患者心理の間に,はつきりした線が引けるものではない。たとえば,前に述べた結核恐怖症などは,少し度を越せば神經症,りつぱな精神病である。また「結核をたのしむ型」も少し度を越せばヒステリー性精神病になりかねない。もつとはつきりしたものは,變質者,更には偏執症,躁鬱症,精神分裂症。こうなつてくると,患者同志の間でも,つまりしろうとがみてもおかしくなつてくる。
しかし,これらの精神病にしても,結核という慢性の不幸がなかつたら,起らなかつたものかも知れないのだから,やはり結核患者の心理の一つといえないこともないだろう。殊に,神經症やヒステリー性精神病などは,明らかに結核という病氣,しかもその何らかの症状に結びついて起るのだから,はつきりしている。
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