2頁の知識
むくみ
大島 硏三
1
1東大美甘内科
pp.26-27
発行日 1952年7月15日
Published Date 1952/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907091
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“むくみ”とは何か
顏がはれぼつたい,足がむくんだということは,素人にも氣がつくことですから,それを直訴に診察を乞うこともあり,また病氣の經過中に“むくみ”が出ることは重大なことで,見逃してはならないことであります。このむくみとは何かを知るためには,毛細管の生理,組織,血液間の物質代謝ということから語らねばなりません。簡單にいえば血液が循環しているのは,組織に榮養と酸素を送り,老廢物と炭酸ガスを運び去るためであり,毛細管は蛋白質以外の水及び溶質を自由に通過せしめるものであります。毛細管を出た液體が組織細胞に達する路は,細胞と細胞の間にある極めて僅かの間隙を通つて行くのであり,還るのもまた細胞を通り再び毛細管中へ入りますが,一部はリンパ管へ流れ去ります。この組織細胞の間隙にある小量の液體を狭い意味の組織液といゝ,また肋膜腔や腹膜腔等にある液體と合せて細胞外液と名付けています。毛細管壁を通つて出入する液體の量は一日通算しますと大變多い量になりますが,健康者では毛細管からの漏出と吸收とがよく平衡状態を保つて,細胞外液量は一定に保たれております。“むくみ”はこの平衡が破れて組織液が異常に増大した状態をいゝます。これが細胞外液である最も簡單な證據は,むくんだところに指壓を加えると,そこが凹みます。若し細胞内の液ならばその樣に簡單に液の移動はおこりません。
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