発行日 1952年9月15日
Published Date 1952/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907134
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重症患者の場合
同じく重症患者といつても,病氣の新舊,本來の性格,療養の環境などによつて一律ではない。しかし,だからといつて,數年の療養の後,經濟的にも家庭的にも最低の状態に落ちこんで,しかも重症になつた場合と,めぐまれた生活環境の中で,急に發病して重症化した場合の心理に,かんたんに差がつけられるものではない。
長い療養の間には,病氣そのものの他のいろいろな不幸がつみ重なつて,患者の心理は多彩な變化をうける。しかし,變化はいつも陰性の變化である。患者自身にとつては,その時どきには喜びであつても,全體的にみれば,變化は大なり小なり不幸の形で積み上げられて行く。そうした年月の後,病状の重症化が起れば,患者の耐えうる心理の極限に近づいているともいえるだろう。
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