連載 A子とともに(コント)・1【新連載】
チヤーチルの頭
關口 修
pp.41-43
発行日 1952年2月15日
Published Date 1952/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907001
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(チヤーチルは偉いね。ダンケルクで破れ,トブロクで敗けながらよく隱忍して國力の充實を計つて,終局の勝利を得た。その呼吸その行き方—ちよつと眞似の出來ない藝當だね……)
A子は器拭テーブルに並べた外科器具を片付けながら,院長のこの言葉を聽いて呆れた,と云うよりは寧ろ恨めしく感じた—というのは,手術臺に乘つてから,切開されるのが厭やだと云い張つた患者も惡いが,院長の態度も穏やかでなかつた(……では勝手にし給へ……)そう云い棄ててドカリと椅子に腰を下ろして,悠々と雑誌を讀みはじめたからだ。A子の目にはいつか涙が滲んできた。患者に對する看護婦としての感傷的な氣持ちの負擔に怺えられなかつたのだ。
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