名詩鑑賞
—北原白秋—思ひ出序詩
長谷川 泉
pp.34-35
発行日 1950年4月15日
Published Date 1950/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906638
- 有料閲覧
- 文献概要
日本における近代詩人のうち。眞に詩人の名に値する人の名を求められたら北原白秋の名を沒することはできないであろう。詩集,歌集,童謠集をはじめ白秋の生前の著書は120册に餘る。このことはいかに彼の資質が天稟のものであつたかを物語る。
白秋か近代詩人としておしもおされもせぬ地位をしめたのは處女詩集「邪宗門」によつてである。明治42年のことである。この年には高村光太郎,木下杢太郞らとともに詩誌「スバル」や「屋上庭園」が發刊されている。「われは思ふ,末世の邪教,切支丹でうすの魔法。」といつたよ5な南國的なエキゾティズムにみちあふれた「邪宗門」の出現によつて,白秋はハモニカと銀笛,びいどろと切支丹でうすの魔法の詩人として獨自の存在となつた。その感覺は當時の詩壇を風靡していた上田敏や蒲原有明などに見られないものであつた。一種ものういデカダンスと世紀末の神經,強烈な色彩と鋭い感覺,過敏な幻想のはなやかさによつて。
Copyright © 1950, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.