発行日 1948年4月15日
Published Date 1948/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906313
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むざんな廢墟になつたお宮やお寺が,いつのまにか立派に再建出来てゐる。そこにはまあたらしい檜のさい錢箱がそなえつけられ,善男善女が十圓札を投げこむ。風でたまたま札が飛ぶと浮浪兒がまちかまえて捨う。敢戰後4年目の今日一風景である。
病院はいくつ復興したであろうか。その窓ガラスは入れられたであろうか。看護婦の宿舍は出來たであろうか。かつて,神風が吹くと信じきつたわれわれの希望も裏切られた。その時何といつたか。科學の力だと。お宮やむ寺はいち早く復興し,再び善男善女を集める。市川の蟲きり爺さんに棒げ物が殺到する。だが病院の再興に寄ふをした寄特な者を聞いたことがない。町内のおいなり樣の再建には大金を出す人はあつても──まことに不思議な國民である。
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