発行日 1947年9月15日
Published Date 1947/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906234
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
他所ではどうか知らないが埼玉,栃木のある地方では子供らが鬼ごつこなどをするときつかまりさうになるとタンマといつて親指と人さし指で圓い輪をこしらへて高く手をあげると鬼はつかまえることができないルールがあつた。それがタンコとなりタマとなり,今ではタンとつまつて使はれている。タンマとかタマとかいうことを球(たま)あるいは玉子(たまご)という意味にとらて,指で輪をこしらえて見せるのは面白い。5,60年も以前からのことなのだが,おそらく英米人がtimeという語を競技で使うのを聞き覺えて利用したのに相違ない。外人が“Come!”と呼ぶので洋犬をカメといつたのもそのたぐいであろう。また給仕をボイというのは,もとは黒人などの召使をいささか輕んじて用いた呼び方だつたのだが,今日「ボイさん」と呼んでもふんがいする給仕は1人もあるまい。ペンという語はいつしか立派な日本語になつてをり,數十年前にはペンシルという語もほとんど國語になつていたのである。
明治の初めの英語の流行はまことにめざましいものだつた。英語入りの都々逸がうたわれたり,銀杏返しに黄八丈の下町娘さへ常磐津のおけい古とちやんぽんにNational Rea-dersを習いに通つたほどだから,いかに多くの人々が英語を學んだであろうかは推量するに難くない。
Copyright © 1947, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.