発行日 1946年10月15日
Published Date 1946/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906122
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私は看護婦登場の小説をあま讀んでゐない。私の讀書が狹いせいであらうか。あるひは一流の作家は看護婦を描く機會をもたなかつたせいであらうか。しかし案外,映畫のなかではひんぱんに白衣の姿の看護婦な幕面にみてゐる。するとやはり通俗小説とか映畫ではさかんにモデルになつてゐるのかもしれない。さう云へば岸田國士のなんとか云ふ小説の冒頭でも看護婦がでてきたやうに記憶する。私は岸田氏の小説は,讀みとほす根氣がなくてやめたからこれはとうもはつきり云へない。また船橋聖一もなんだが,そんな職業人をテーマにした小説をかいたのを目に觸れたやうに記憶する。しかし,船橋のその小説も私は愛讀者でないから,これも,斷言することはできないのは殘念である。
しかし概して一流の小説家はあまう取り扱つてこないのではないかと思ふ。今後のことは豫想はできない。しかし看護婦が立派な作品の形成にあつかつたばあいは稀ではないかと思ふ。しかし絶無ではあるまい。
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