看護学講座
解剖・生理學(1)
日野原 重明
1
1聖路加女子專門學校
pp.29-45
発行日 1946年10月15日
Published Date 1946/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906123
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序
此の度本誌に看護婦の專門教育の爲,特別の講座が設けられることになり,本號より向ふ一ヶ年に亘り,解剖・生理學を講ずることを依嘱された。
日本の醫學は明治・大正・昭和に亘り歐米の醫學を取入れつゝ急速な發展をなし,又今日迄に世界に誇る幾多の輝かしき業績をあげたのであるが,今日顧みて痛感することは一つは豫防醫學,社會醫學の貧困さであり,一つは看護學の低調さである。日本の看護婦が特に米國の看護婦に較べて社會的に,且又學問的に甚だしく低いレベルにあることは看護婦自身の責任ではなくて,看護の價値,使命に對する一般社會の認識不足竝びに,教育制度の不備,教育家の無責任さによるものである。看護婦が醫者のよき介助者として治療醫學,社會醫學の領野に活躍し得る爲には,醫學生に對すると同じ學問的な良心を以つて教育が爲されなければならない。この意味に於て看護婦の──新しい言葉では──保健師の養成には,その基礎醫學にも今迄の如き低調な教育の殼を打破り,本當の意味に於ける專門教育をなすことが必要である。然しこの場合の專門教育と云ふのは,醫學生のうける教育とは勿論色彩を異にするものでなければならない。
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