JJN Essay
他者の体験世界を知ろうとすること—父の死にものぐるいの救助への懇願
谷津 裕子
1
1日本赤十字看護大学大学院博士後期課程
pp.1162-1166
発行日 1999年12月1日
Published Date 1999/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905997
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
「人間は他人を知る能力をもっておりながら,けっして他人を完全に理解することのできない個体である」1)(トラベルビー)
この言葉にはじめてふれたのはたしか大学生の時でした.しかし,そこに含まれる意味の重さは,つい最近,今は亡き父の看病にあたるまではわからなかったように思います.他者が感じ,考え,体験していることを,いわば内側から理解することの困難さ,それは私にとってもっとも身近である父ですら他者であるという事実を直視することにほかなりませんでした.また,この体験を通じて,「患者」と呼ばれる人間にとって,自分の意思をほかの人に伝わるように表示できるということが,どんなに深い意味をもつのかということも知りました.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.