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気分次第読み放題・10
—(メアリ・シエリー著,森下弓子訳,1984年)—『フランケンシュタイン』
武井 麻子
1
1日本赤十字看護大学
pp.970-971
発行日 1999年10月1日
Published Date 1999/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905952
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怪物を夢見て
私はキングコングが好きだ.というと,あんなに毛むくじゃらでたくましい男が好みなのかと,したり顔されてしまうのだけれど,それはちょっと違う.私が映画で心ひかれたキングコングは,いとしい女性を助けようとして逆に誤解され,大きな身体でニューヨーク中を追いかけ回される,心やさしい怪物だった(ように思う).なんてかわいそう!
怪物といえば,以前に研修でアメリカのジョンズ・ホプキンス大学病院を訪れた際,構内のブック・ストアに『フランケンシュタイン』の本が平積みされていて,どうして医学部のブック・ストアにこんな本が?と不思議に思ったことがあった.容貌魁偉なボリス・カーロフの演ずる怪物映画で,その原作者がロマン派の詩人として有名なシェリーの夫人だということくらいしか知らなかったからだ.時代の先端を行く遺伝子治療を,生命を操作するものとして「フランケンシュタイン症候群」と批判を込めて呼ぶ人がいることを知ったのは,帰ってきてからのことだった.
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