グラビア この時この1葉
新説・看護婦が書いた最初の本
坂本 玄子
1
,
山根 信子
1
1看護史研究会
pp.114-115
発行日 1999年2月1日
Published Date 1999/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905763
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これまで日本の看護婦が書いた最初の本は,平野鐙(有志共立東京病院看護婦教育所3回生)による1896(明治29)年刊行の家庭看護書『看病の心得』とされてきた.しかし最近,1895(明治28)年刊行の伝染病看護書『赤痢虎列刺病看護法』が掘り出された(平尾真知子氏 '96年報告・所蔵書).
著者は田中定(京都看病婦学校7回生).当時急務だった伝染病の看護のために速成看護婦養成講習会が各地方行政により開かれ,田中は講師を務めた.本書はそのテキストとして書かれたもの.この14×20.5cm,75ページの小冊子の内容は,看護婦の心得,伝染病看護,病人に関する看護,患者の観察の4分野31項目に及ぶ.注目されるのは,伝染病看護技術のみならず,当時欧米から移入されたばかりの,看護専門職として必要な近代看護全般について熱く語られている点である.実に本書の半分は生活環境改善,生活行動支援,一般看護法であり,看護婦は何に配慮してどう行動するのかが書かれている.こうした構成は当時の看護婦が書いた書に共通するもので,前出の2校と並んで「最初の近代看護婦養成校3校」と称される桜井女学校養成所1回生で看護界の著名なリーダーであった大関和の『派出看護婦の心得』(1899年刊)もそうである.
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