痛みのシリーズ・8
「痛み」の新説gate control theory
清原 迪夫
1
1東大麻酔科
pp.870-871
発行日 1966年6月10日
Published Date 1966/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201356
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Specificity theoryとpattern theory
痛みの感覚の成立するしくみについては,問題が問題だけに古来多くの議論がなされているが,従来の諸説は,一応二つの系統に分けて考えられよう。その一つは,現在なお臨床で用いられているspecificity theoryである。すなわち,末梢受容器は自由終末であり,その感覚伝導神経はAδとc線維で,脊髄に入つてからは脊髄視床路を上行し,視床に入る経路をとるというのである。これに対して,痛みについては特定受容器も伝導線維もなく,末梢から痛みのパターン形成が行なわれるというpattern theoryである。これは考えかたとしての起源は古いが,最近のWeddelら英国解剖学者グループの刻明な研究で強調されてきたもので,その簡単な例は,自由終末しか見られないことから,痛みのみが唯一の感覚と考えられてきた角膜が,温度覚を有する事実である。赤外線照射で温感を,コンタクトレンズ接着のとき冷感を感じるのである。また,ある領域に一本だけ感覚神経を残した皮膚では,痛みの感じというよりは不快感を感じ,痛みの感覚の成立のためには多くの神経終末が重畳交錯していなければならないという。このことは,古くからprotopathic sensationとepicritic sensationの差別として説明されてきたことを修正するものである。
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