特集 変わる医療事故の概念とその対策—リスクマネジメントの視点から
リスクマネジメントが求められる医療を取り巻く状況—医師の立場から
川村 治子
1
1杏林大学保健学部
pp.1127-1131
発行日 1998年12月1日
Published Date 1998/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905724
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はじめに
細分化し,高度化する医療現場は常にリスクと隣り合わせである.医療技術の進歩はかつてなす術もなかった高齢や重症の患者にも,多大な恩恵をもたらした.しかしその一方で医療現場は多忙をきわめ,人間的なふれ合いは減っていく.医療サービスの提供者が人間であり対象もまた人間である限り,事故は完全に防げない.そしてそこに人間関係の軋みが存在すれば,一気に紛争化の道を辿る.
さて,最近の医療訴訟の増加は目覚ましい.新聞報道によると1997(平成9)年度の新提訴は595件で,5年前に比べ60%も増加したそうだ1).人口20万人の市で年に1件,医師300人に1件という計算になる.訴訟事例の背後には示談で和解する事例が相当数あるので,もはや医師・看護婦にとって医事紛争は対岸の火事ではなくなった.
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