特集 変わる医療事故の概念とその対策—リスクマネジメントの視点から
リスクマネジメント—これまでの事故防止の取り組みとはどう違うか
鮎澤 純子
1
1東京海上メディカルサービス株式会社メディカルリスクマネジメント室
pp.1121-1126
発行日 1998年12月1日
Published Date 1998/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905723
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なぜいま「リスクマネジメント」なのか
日本の医療をとりまく環境が大きく変わりつつあります.医療に向けられる社会の評価はかつてなく厳しいものになっており,その厳しさを示す具体的な数字として厳粛にそして謙虚に受け止めなければならないのが,たとえば医療事故をめぐる紛争・訴訟の増加です.「医療事故を起こさない」一これは患者の安全と安心を預かる医療職にとって永遠の課題です.そしていま,その課題の持つ重さをあらためて胸に刻みつつ,医療の高度化・専門化などに伴い医療事故の発生要因そのものが増えているという現実,そうした事故がこれまでになく紛争・訴訟につながっていくという現実も,認識しておく必要がでてきました.
さて,変わりつつある環境に対しては,その変化に対応した新しい取り組みも必要です.ではどうしたらいいのか.そうしたなかで注目されてきたのが,アメリカの医療界で広く実践されているマネジメントの手法の1つである「リスクマネジメント」です.医療訴訟対策から事故防止の重要性にたどりつくなかで積み重ねられたその考え方や実践のノウハウは,私たちの新しい取り組みのヒントになり得るものも少なくありません.本稿では,アメリカのリスクマネジメントについて紹介しながら,これまでの事故防止の取り組みとはどう違うのか,それぞれの組織としてリスクマネジメントにどう取り組むかについて検討します.
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