連載 ケアのための病態生理学・10
循環器
竹中 文良
1
1日本赤十字看護大学
pp.958-965
発行日 1998年10月1日
Published Date 1998/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905690
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心臓の形態と役割
心臓は私たちが生きている間,長命の人では100年近い年月,寸時の休みもなく動く臓器である.10年ほど前,偶然98歳の御婦人の左開胸手術を行なった時,力強く拍動を続ける心臓を見て不思議な感動を覚えたことがある.また興味深いことに,心臓を構成している細胞は生まれつき分裂したり増殖したりする遺伝因子が封印されている.このため成長にともない大きくなったり,はたらきすぎて肥大したりすることはあるが,脳の神経細胞と同じでどのような刺激が加えられても分裂や増殖することはなく,終生同じ細胞がはたらき続ける.これが心臓に癌ができない理由だという.同じ理由から細胞が壊死しても再生することはない.
大人の男性の心臓の大きさはほぼ握りこぶしほどで,平均350gの袋状の臓器である.長年うっ血性心不全などで闘病していると次第に肥大し,800g以上にもなる.
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