連載 道拓かれて—戦後看護史に見る人・技術・制度・7
「療養上の世話」の変遷—たかがモーニングケアというなかれ
川島 みどり
1
1健和会臨床看護学研究所
pp.686-689
発行日 1997年7月1日
Published Date 1997/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905392
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保助看法の二大看護業務の1つである「療養上の世話」の大切さを説く看護婦は多い.だが,現実の臨床場面でこの領域での責務をきちんと果たしているであろうか.一応,日課としての位置づけはされていても,それが専門職として誇れる内容になっているかどうかはきわめて疑問である.いったいいつ頃から「療養上の世話」に関する仕事が十分果たされなくなったのであろうか.こうした疑問自体が適切ではないという人もいる.昔から看護婦は医師のアシスタントで,患者の療養上の世話は二の次であったというのだ.確かに,その施設のヒューマンパワー事情をはじめ,付添依存や幹部のフィロソフィーによっても,様相を異にしていたであろうから一概には言えない面もある.
だが,戦後50年の歩みのなかで,筆者自身も,看護自体が後退しつつあることを実感した時期があったことを記憶している.それは,医療技術・疾病構造の面での,戦前との大きな差異が生じた時期,すなわち1950年代後半,である.「ペニシリンの登場に始まる抗生物質,抗結核剤の開発・普及により急性伝染病や結核が克服され,副腎皮質ホルモンや利尿剤の開発,同時に麻酔技術,大量輸血,補液技術の導入・普及は外科手術の安全性を高めた」1).この過程と平行して社会的には「医療保障の拡大政策,高度経済成長政策が始まり,医薬品産業の企業活動も営利性がより加速」1)した.
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