連載 道拓かれて—戦後看護史に見る人・技術・制度・8
「療養上の世話」の変遷②排泄の援助
川島 みどり
1
1健和会臨床看護学研究所
pp.780-784
発行日 1997年8月1日
Published Date 1997/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905411
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施設の高齢者は3度死ぬ?
「あのなあ,年寄りちゅうもんは3度死ぬんやでえ.1度目はなあ,家におられんようになってしもうて,いよいよ施設にはいる時や.わてもな,死ぬ思いでここに入りましたのやで.2度目はなあ,おしもの始末があかんようになったとき.年をとりますとなあ,お小水が近うなりますやろ.身体が不自由で看護婦さんに頼みますとなあ,“さっきしたばかりやないか,もう少し我慢できんやろか”と,こともなげにいわれますのや.もし漏れたらどうもなりまへんやろ.そいで,懲りずに幾度もお願いしますの.そしたら今度はおしめをあてられますのやで.この時2度目に死にますのんや.こうしてなあ,やっとおしめに慣れた頃,今度は別の看護婦さんが来よってね.“あんた尿意がおますのやったらおむつ外しましょ!”って,いとも簡単に言われます.さっきも言いましたようにおしめをするときは死んだ思いでしたのに,また外されてまたあかんようになってしもたら,一体何回死ぬことになりますか.看護婦さんの都合でおしめをされたり外したりではほんに困ります.そうそう,3度目の死はなあ,お迎えのときですねん.そやからな最初から3回までは覚悟してますのや.それ以上は増やさんで欲しい思いますねん」.
「そいでもなあ,優しい優しい看護婦さんもいてますのや.自分でトイレに行けませんやろ.どうしてもお通じがつきにくく,下腹がぱんぱんにはってしまいますのや.
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