連載 買いたい新書
—シドニー・ローゼン編中野善行/青木省三監訳—私の声はあなたとともに—ミルトン・エリクソンのいやしのストーリー
出口 泰靖
1
1武蔵大学大学院人文学研究科社会学専攻
pp.594-595
発行日 1997年6月1日
Published Date 1997/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905370
- 有料閲覧
- 文献概要
ユーモアを手段として,苦境にある患者の「枠組み」を変えていく技法を紹介
臨床の場において「病気をみるのでなく人をみよ」と言われてから久しい.しかしながら,この「人をみる」ことはどういうことなのであろうか.その回答の1つとして,“病気という事態に伴って起こる「不安,苦悩」から人が解放,解消できるよう,援助すること”というものがある.確かに,不安や苦悩は,病気それ自体をみただけではわかり得ないし,病いをもった人々それぞれ1人ひとりの,独自のものであるといえるであろう.
ところで,そういった不安や苦悩は,どうすれば解消できるのであろうか.人生において病気やそのほかのさまざまな苦難に遭遇した時の不安や苦悩の状態というのは,ハッキリいって本人でないとわからない.ほかの者からしてみればそれほど他愛のないものでも,袋小路に入り込んでいる本人にしてみれば,苦境を解こうとすればするほど,ますます不安や苦悩をかかえ込んでしまう.まさに,悪循環のきわみと言っていい.その悪循環から脱せずにい続けるのなら,へたをするとその人は「死に体」の状況にまで追い込まれかねない.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.