書評
—青木省三 著—こころの病を診るということ—私の伝えたい精神科診療の基本
松﨑 朝樹
1
1筑波大学・精神神経科
pp.891
発行日 2017年9月15日
Published Date 2017/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205459
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こころに問題を抱える者を前にして,我々はどのように診療に当たっているだろうか。明確な項目や基準が挙げられた診断基準の使用が普及しつつあり,さまざまな精神障害に対する治療のガイドラインも作成されていることからすれば,すべきことは明確になったようにみえる。しかし,精神科の医療のすべてが明確になったわけではない。精神医学で扱われるものが人のこころや人生である以上,そこには人間的な理解やかかわりが必要とされ,アルゴリズムやガイドラインに書かれていることなどは実際に必要となる精神科の臨床の一部でしかない。では,精神科に関わる医療者の正しいあり方とはどのようなものだろうか……そんな精神医学における不明確な点をどう理解し,どう対応すべきか,それが語られたのがこの本である。
解説は実際の臨床に沿って始められる。初めて精神科の病院を訪れた者に対してどのように話を始めるべきか,診療情報提供書や問診票を手に何を思うべきか,患者の様子から何を知ることができるのかなど,情報をどう拾い上げ,その精神障害や人物,人生をどう理解し,どう診断を下し,その診断とどう向き合うべきだろうか。診断を下した後,患者と関係を作り,維持し,治療的に関わる中,さまざまな言葉や薬を手に,どのように寄り添い,回復へと導き,その方向を見定めるべきだろうか。さらには患者の中には怒る人もいれば,自殺を試みる人もいれば,話が止まらない人もいるが,どのように対処すべきだろうか。そのような実臨床におけるさまざまな物事につき,ときにきわめて細やかに,ときに大局的な視点から理解を助けるよう,あるときには非常に理論的に,あるときには非常に具体的に語られている。
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