連載 高齢化社会の福祉と医療を考える・21
エリクソンに学ぶケアの意味[1]
木下 康仁
1
1立教大学社会学部
pp.504-507
発行日 1988年5月1日
Published Date 1988/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921994
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「ひとりの人間として」の視点からケアを考える
前回はケアの基本的な意味について考えた.まずこの言葉が現在どのように使われているかを整理し,ケアの意味を確かなものにするための分析枠組を提示した.そして,原語の意味と日本語訳の意味を批判的に検討した.
私たちは「ケア」とわざわざカタカナ表記する言葉にこだわり,この言葉を単なる流行語に終わらせないために,私たち自身による基本的意味づけ作業をした.そして,ケアとは,自発的に他者を気づかい,しかもその気持ちを行為によって表現することと定義した.援助を必要とする人々を知った時,私たちは心を痛めずにはいられないのであり,自分にできることをしようとする.これはおそらく,人間の本性と言ってよいのではないかと思われる.したがって,ケアは本質的に直接的な社会的相互作用になるのであり,人間が共に生きていくための積極的行為である.
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