書評
―青木省三 著―時代が締め出すこころ―精神科外来から見えること
加藤 敏
1
1自治医科大学精神医学教室
pp.101
発行日 2012年1月15日
Published Date 2012/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102086
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比較的最近の「ヨーロパ神経薬理学誌」にて,EU全体における2010年1年間の精神疾患有病率の調査結果が公表されている(Wittchen HU, et al, 2011)。それによると,EUでは100人のうち実に38人余りが不安障害やうつ病をはじめとした何らかの精神疾患を抱えている。驚くほど高い有病率である。またWHOは2008年に,寿命,健康喪失の大きさ(DALY値)を尺度に世界69億を超える人を対象にして行った病気の統計報告(2004年時)を発表した。それによると,呼吸器感染症,消化器感染症に次いで第3位にうつ病があげられている。日本についてDALY値をみると,うつ病が第1位で,認知症,統合失調症,双極性障害,自傷などトップテンに精神疾患関連の疾病が5つ入っている。
こうした疫学知見は,グローバル化の現代,先進国,また途上国においても事例化する精神疾患が増えていること,他面で,精神疾患の発症に際し,遺伝子だけでなく,社会・文化の影響も無視できないことを指し示す。
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