特別記事
音楽療法—医療との今日的つながり
貫 行子
1,2
1日本大学・金沢大学大学院
2バイオミュージック研究所
pp.821-826
発行日 1994年9月1日
Published Date 1994/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904631
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音楽療法の歩み
これまで音楽は,芸術あるいは娯楽として長い間愛好されてきたが,21世紀を迎えようとする今,音楽の持つ不思議な力(機能性)に着眼し,これを活用した新しい領域の音楽の潮流—音楽療法,バイオミュージック,アメニティサウンドなど—が広がりつつある.こうした背景には,音楽の力を科学的に証明することが可能になってきたことも大きな要因となっている.
音楽療法とは,音楽に内在する力を適用して,心身に失調や障害のある人を改善・回復に導く心理療法のことである.これが本格化したのは,今世紀の半ばアメリカで,戦争帰還兵の心身症がどのような医薬治療でも回復できず,音楽療法によってのみ治癒できた事実から盛んになって,全米音楽療法協会が設立された.引き続きイギリスをはじめヨーロッパでも盛んになり,日本では1969年に,東京芸術大学の桜林仁先生と筆者が,J.アルヴァン女史の「音楽療法」1)を翻訳して紹介したのが最初であろう.
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